2018年06月13日

【SS】お題: #梅雨のおんな城主直虎 【書いてみた】

ついったのお題 #梅雨のおんな城主直虎 に便乗。









【梅雨のおんな城主直虎】


「こなたの庭の紫陽花は、まっこと美しいの。
紫陽花の花の色は赤紫とばかり思うておった。」

しとど降る雨の季節は、晴れ間があれば、ここぞとばかり草取りに励むが、雨が続けば竜宮小僧のおつとめも少し息がつける。
幼馴染の部屋に上がり込んだ小坊主は庭先の紫陽花に目をやった。

「あの紫陽花はお城の隅に咲いていたのを殿がお持ちになり「小野へも」と分けてくださったものというぞ。
お館の紫陽花と元は同じものだ」

「なんと!では何ゆえかように色が違うのじゃ」

「なんでじゃろうなぁ。
だがあの瑠璃の色は、母上が好まれたゆえにな…大そう喜ばれておった」

儚くなった母を思いだしたのか、雨に濡れてひときわ色を濃くした紫陽花に目を向け、幼馴染はスンッと息をついた。

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長雨がしばし止み、ひと時のぞいた青空の下、おんなは佇んでいた。

ここにはかつて居館の庭があった。
花の好んだ父が丹精した花木が季節ごとに目を楽しませてくれた。


過日、西をめざした暴風のような大軍は、この小さな土地をなめる様に焼き尽くし、通り過ぎた。

家々も、城も寺も、居館もその庭を彩った花木も、ことごとくが灰となってしまった。


しかし人びとの生命だけは護られたのであるから何よりだ。

いくら焼き尽くされようとも、人びとの生命と、それを養う土地があれば、また蘇ることはできると、われは知っておる。



「なんじゃ」
違和を覚えたおんなは、小首をかしげあたりを見回した。

「焼け残ったのか? それにしてもここの紫陽花はたしか…」

弱弱しく枝を張り葉を広げ、それでも重たげに差し伸べる花は鮮やかな瑠璃の色。

「そなた… 
そなたは、こなたからも見守っておれ」



posted by lionne at 21:12| ツイッターまとめ | 更新情報をチェックする